本研究は, 頁岩の膨張機構を明らかにするため, 焼成過程で発生するガス組成の測定を行い, ガス組成と頁岩中の含有成分, ガス発生と膨張機構の関係, 融着機構等について種々検討した. 得られた結果をまとめると次のようになる.
(1) 頁岩の最大膨張率を示す条件は焼成温度1100℃以上, 昇温速度40℃/min以上の加熱条件が必要である.
(2) 発生ガスは, 膨張性のよい頁岩ではH
2, CO
2, H
2O, COガスを, 膨張性の悪い頁岩はCO
2及びH
2Oガスのみを検出した. このうちH
2やCOガスは頁岩中に含まれる有機炭素の分解により生成することを考察した. したがって, 有機炭素含有量の多い頁岩ほどよく膨張し, また, 膨張性の悪い頁岩に有機炭素を添加すると膨張性が改善されることを明らかにした.
(3) 発生ガス量は頁岩の溶融温度付近で急激に減少し, 発泡温度を過ぎると再び増加することを明らかにした. この結果から, 膨張機構は従来の説と同じであることが分った.
(4) 膨張物は, 還元性雰囲気にある内部層と酸化された外殻層の2層構造からなっていることを示し, 特に外殻層は空気中の酸素によって酸化され, 耐熱性の高い焼結層を作るため, 頁岩粒同士や炉壁との融着防止に役立っていることを明らかにした.
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