腸チフス菌培養濾液で感作したO型ヒト赤血球は,腸チフス患者および腸チフス免疫家兎の血清と凝集を起こすが,この赤血球凝集反応をTyphus abdominalis-Middlebrook-Dubos (T.a.-M・D)反応と称する.腸チフス患者,腸チフス混合ワクチン接種者,腸チフス以外の疾患,腸チフスの既往歴のある者,健康者について,また腸チフス死菌を接種した家兎についてそれぞれT.a.-M・D反応と, Widal反応とを行なつた.腸チフス患者では, Chloramphenicolを発病早期に使用すると, Widal反応は高い凝集価を示さないが, T.a.-M・D反応は総べての症例において明らかに陽性であつた.腸チフスワクチン接種者では, T.a.-M・D反応は陽性であつたが, Widal反応は一般に陰性であつた. T.a.-M・D反応は健康者,腸チフス以外の疾患,腸チフス既往歴のある者に,それぞれ陰性であつた.腸チフス死菌で免疫した家兎のT.a.-M・D反応とWidal反応との間には平行関係が見られた. T.a.-M・D反応はWidal反応よりも腸チフスの診断に役立つ.
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