企業の工場部門と本社もしくは支店部門(オフィス)は互いにより独立に立地するようになりつつある. しかし, それはどのくらい普遍的なのであろうか. またそれは企業の規模や業種, あるいは本社所在地によってどのくらい差が見られるのであろうか. 本稿はこのような問題意識にたって, 日本の製造業におけるオフィス立地と工場立地の照合を行ない, 両者が「一致」する場合について考察する. 対象企業のオフィス及び工場立地パターンを見ると, 何らかの形態においてオフィスと工場の立地に一部でも一致が見られる企業が全体の半数近くを占めている. これだけの立地の一致が全て各企業の個別の「特殊事情」で説明できるとは考えにくく, 依然として牽引力があるとみるべきであろう. 「一致あり」企業と「一致なし」企業との間に見られる差を, 企業規模の面から検討すると, 企業規模の小さい階級では「一致あり」企業が多く, 大規模な階級では「一致なし」企業が多いものの, 両グループの差はあくまで相対的なもので, 企業規模によって明確に識別されるものではない. 次に, 各業種別のオフィスならびに工場数とその立地一致度をまとめると, 機械, 電機などの組立型産業で立地の一致が多く, 化学産業や石油・ゴム, 窯業などの素材型産業では少ないことがわかる. 本社所在地別にみたオフィスと工場の立地の一致比率は, 3大都市圏の都心部については極めて低く, その最縁辺部で際だって高い. また名古屋圏の郊外部が首都圏及び近畿圏より一致度が高くなるなど, 3大都市圏間の差も見られる. これらの分析を総合すると, 3大都市圏郊外部に本社を置く企業が, 全国的にみて最もオフィスと工場の立地の一致率が高いという実態が明らかに浮かび上がってくる.
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