若者のセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスのプログラムやサービスへのアクセスの確保は,1994年にカイロで開かれた「国際人口開発会議(ICPD)」で提唱され,その後,広く世界に認識されるようになった.2000年以降の国連ミレニアム開発目標(MDGs)では,若者のセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスは,妊産婦の健康の改善とHIV/エイズの蔓延の低下のターゲットの下,若者に焦点をあてた 3 つの指標でモニタリングされてきた.世界的に「15~19歳の出産率」は減少,「15~24歳のHIV感染率」も低下,さらに「15~24歳のHIV/エイズの知識を有する割合」も上昇したものの,国家間格差,国内での地理的条件による格差,所得による格差が指摘されており,大きく前進したとは言い難い.2016年からの国連持続可能な開発目標(SDGs)では,出産率とHIV感染率に加えて,新たな指標として,セクシュアリティに起因した暴力被害,女子の早期かつ強制的な結婚,女性の性器切除の排除や撤廃など,リプロダクティブ・ヘルスを超え,人権と関連のあるセクシュアル・ヘルスの観点からの指標が盛り込まれた.
若者のセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスのとらえ方として,今までは,安全でない性行為や性感染症,若年の妊娠などのリスク行動やネガティブアウトカムをどのように予防できるのかという,リスクアプローチのとらえ方が主流であった.しかし最近では,若者のセクシュアリティをポジティブにとらえ,自分の身体に対する誇りや自己肯定感に着目する研究も増えている.現在,人権やジェンダーを中心とし,性や生殖に関する知識のみではなく,性に関するコミュニケ―ション術や自己決定も内容に含まれる包括的な性教育(Comprehensive Sexual Education: CSE)の考え方が世界的に推奨されている.
日本は決して性教育の先進国とは言いきれないが,世界的な動向と比較しながら,日本で実施できていること,できていないことを客観的に評価し,発信していくことが,SDGs時代さらに次期SDGsに向けて,世界の若者のセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスの向上への貢献につながる.
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