2023年4月の日本国博物館法の改正により、博物館資料のアーカイブ化と公開が博物館活動の一部として加わった。では、文化人類学と関わりの深い民族誌資料に関するデジタルアーカイブとその公開方法はどのようなものが望ましいのだろうか。
本稿では第1に、2000年代後半から2010年代にかけて構築された北米先住民資料デジタルアーカイブの傾向を探り、課題を明らかにする。その上で、2014年から現在まで筆者が代表者として行っている国際協働研究「再会プロジェクト」、および、その成果として構築したデジタル映像アーカイブ『RECONNECTING Source Communities with Museum Collections』の機能、構造、ソースコミュニティの人々へのさまざまな配慮をIndigenizationの観点から詳解する。本稿の第2の目的は、北米での事例との連続性やそこで生じた課題との関連性を検討することで『RECONNECTING…』の博物館人類学上の位置づけを行うことである。注目すべきは、「再会プロジェクト」実施中に個々の資料を熟覧したソースコミュニティの人々が、多くの資料に作り手の創意工夫や作風を見出したことである。これは作り手の思想または感情が創作的に表現されている点、つまり、民族誌資料の中に著作物性が含まれていることの「発見」を意味する。本稿の第3の目的は、著作物性と外国著作物という特徴を持つ民族誌資料をデジタルアーカイブとして日本国内で公開する際の適法で理想的な手順を、脱植民地化の文脈に沿った形で提示することにある。
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