【目的】近世・近代の家庭における食生活の実態を知るため、主婦の日記を資料としてそこに記載されている食品・食物を調査・検討行うことでその時代の食生活の一端を考察してきた。今回は地域の異なる二つの日記を比較することで、その食生活の特徴の違いを検討することを目的とする。【目的】『小梅日記』を中心にし、これとほぼ同時期に書かれた江戸近郊の日記である『大場美佐の日記』を比較することで地域的特徴などの違いを検討した。【結果】『小梅日記』・『大場美佐の日記』には日常の細々とした事柄が記載され、その中でも共に贈答品が多く登場し、食品・食物の割合は約80%であった。『小梅日記』では魚介・海藻類が最も多く、その内容は鯛・かつお・いな・ちぬ・さば・あじ・伊勢海老など多種類の記載があり、野菜・果物類では竹の子・松たけ、柿・梨・西瓜・郁李・仏手柑・利夫人橘などがみられ、穀類ではすし・餅類などで、嗜好品では酒・酒券・菓子などの記載がみられた。一方『大場美佐の日記』では魚介・海藻類鮎・肴・かつぶしが多く、野菜・果物類では柿・里芋・竹の子・さつま芋・真桑瓜などで、穀類ではそば・そば粉・赤飯・すし・うどん・うどん粉・餅類などがみられ、嗜好品の酒・にごり酒・菓子は多く用いられていた。どちらの日記も穀類,魚介・海藻類,野菜・果物,嗜好品類が多く記載されており、その中で江戸近郊の大場家ではみられなかった魚券・酒券が紀州川合家では使用されていた。また記載はすくない獣鳥肉類の中で大場家では記載がなかった牛肉は、川合家では
寒中見舞い
などの贈答品として使用されていた。
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