化蛹脱皮に伴うV令幼虫の各環節脱皮腺を解剖学的,組織学的ならびに組織化学的に観察し,つぎのことを明らかにした。
1) 化蛹脱皮期には第1胸節から第6腹節までの脱皮腺はいずれも分泌細胞の全域が空胞で占められる。したがつてV令幼虫にもIV令幼虫と同様に空胞型脱皮腺が存在する。
2) IV令幼虫の顆粒型脱皮腺はV令期においてはIV眠脱皮後から次第に縮小し漸次退化して消失するが,この分泌細胞の崩壊には血球が関与している。
3) V令幼虫の空胞型脱皮腺はその分泌細胞の色調,蛋白質反応の強弱,酸性フクシンやアニリン青への親和性および空胞内の凝集物の有無などによつてさらに有色型と無色型とに分類され,第1胸節から第1腹節までの脱皮腺は前者に属し,第2腹節から第6腹節までの脱皮腺は後者に属する。しかも有色空胞型はIV令幼虫の顆粒型脱皮腺的な性質をいくぶん具えている。
4) 空胞型脱皮腺の空胞は令の経過とともに大形となり,化蛹脱皮期に空胞内容物が腺体外へ放出される。
5) 空胞型脱皮腺のPNAとDNAの経過に伴う組織化学的変化はIV令脱皮腺と同様な傾向を示した。
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