和声進行は音楽を構成する主な要素のひとつであり,複数の和音を並べることで作られる。原理的にはどの和音がどの順番で並んでもよいが,我々が音楽的と感じる和声進行には法則性があり,先行研究からは刺激文脈に応じて特定のパターンの和声進行が期待されやすいことが示されている。脳波を用いた研究からは,和声進行に対する期待が外れた場合に特徴的な脳活動が生じることは報告されているが,その期待が形成される過程で脳内に何が起こっているのかはまだよくわかっていない。本研究では,次の和音への期待を作りやすい音楽的な和声進行と,そうした期待を作れないようにランダムに和音を並べた和音列を聴いているときの脳波を測定し,各和音提示後約100 msで生じるN1と約200 msで生じるP2と呼ばれる事象関連電位の大きさを比較した。実験結果からはN1で違いが見られなかった一方で,音楽的な和声進行の方がランダムな和音列よりも大きなP2を生じた。P2は音の特徴分析と記憶の形成を反映すると言われており,これが次の和音の期待のしやすさと関係することが示唆される。
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