1.1964~1981年度の文部省「体力・運動能力調査報告書」に記載されている10~17歳 (一部18歳) の測定値を分析資料とし, 背筋力を主に, 身長, 握力, 走り幅跳びについても集団追跡法的観察により分析を行なった.背筋力では, 男女とも10~14歳時の値は17歳時の値と有意な相関を示さず, 早い時期に背筋力の高いことが, 必ずしも後の背筋力に反映していないことが示された.握力, 走り幅跳びでは, 17歳時の値と相関がある年齢は性別により異った.
2.文部省資料を用いて, モデル計算により, 脊柱起立筋群の発生張力 (FMus) を推定した.FMusの値は各年齢で背筋力実測値の3~5倍であった.このことから, 実際に測定される背筋力は, 脊柱起立筋の発生張力のごく一部であることが示唆された.また, 背筋力値は体重などの形態的要素の影響を受け, 17歳男子の背筋力測定値は体重と負の相関を示したがFMusは体重と有意な相関関係を示さなかった.
3.1964年度の値を1として, 背筋力値, FMusの相対的変化を逐年的に比較すると, 1967年度以外のすべての年度において, 背筋力値の相対値はFMusより低値であった.1960年代後半から1970年代にかけての背筋力の低下傾向はFMusでは軽微であった.
4.いくつかの仮定に基づいて, 横隔膜面積を推定し, 7~12歳の男女422名についてFMusを算出した.この方法で計算したFMusの値は, 横隔膜面積を465cm
2に固定した場合と比較して, すべての年齢で高値を示した.また, FMusの算出をさらに簡単にする目的でFMus読みとり用グラフを作製した.これは, 2つのグラフからなり, FMus読みとりに必要なパラメータは身長, 体重, 性別, 背筋力値である.
本研究は昭和57~59年度文部省科学研究費「発育期の体力に関する基礎的研究」によった. (課題番号, 昭和57年度57123109, 昭和58年度58124037, 昭和59年度59127034)
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