脳外科および整形外科を中心診療科とした病院にて加療・リハビリテーションを受けている高齢の症例に対し, 口腔診査を施行した。その結果, 口腔粘膜の様々な異常, ならびに口腔乾燥, 顎関節, 味覚の異常などが認められた。また今回調査した症例一人あたりの平均残存歯数は約6歯と少なく, 残存歯の多くは, 要抜去歯や, 辺縁性歯周炎に罹患しており, また使用義歯の状態も再製・修理が必要と考えられる症例が多く, 義歯が必要であっても, 使用していない又は未装着の症例も認められた。
今回は, 口腔清掃状態とADL, 年齢との比較は行わなかったが, 調査結果から考えると単純に口腔清掃状態とADLが相関するとはかぎらず, 入院原因疾患に罹患後にADLの悪化に伴い口腔衛生に対する自覚が低下し, リハビリテーションによりADLが好転した後も口腔衛生に対する自覚の低下が改善せず, 今後従来のリハビリテーションと同時にADLや年齢を考慮した口腔衛生に対する指導ならびに啓蒙を組いれる必要があると考えられた。
また現在摂取している食事内容は, 常食を選択している症例が大多数をしめ, 咀嚼条件が整っていないにもかかわらず, 患者の常食摂取希望が強く, 咀嚼機能の回復のための治療が早急に必要と考えられた。
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