老年歯科医学
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過去10年ごとにみた高齢初診患者の変化
田岡 法一仲盛 健治小林 淳一廣瀬 加奈子孫 仲楠平塚 博義
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2007 年 21 巻 4 号 p. 397-402

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抄録

札幌医科大学附属病院歯科口腔外科における年間初診患者の年齢および疾病の変化を10年毎に臨床統計的に調査し, 現状と今後予想される口腔病変の疾病構造の変化を推測する目的で検討を行った。
全対象症例の年齢の変化では, 15歳以下の減少と65歳以上の増加がみられ, 少子高齢社会の現実が如実に示される結果であった。口腔外科疾患群の変化では, 外傷, 先天異常・奇形, 嚢胞, 炎症の割合が減少し, 口腔粘膜疾患, 口腔心身症などの口腔内科的疾患の増加が認められた。保存疾患群では齲歯, 歯内疾患の減少と歯周疾患の増加, また補綴疾患群ではインプラントや閉塞性睡眠時無呼吸症候群の口腔内装置作製が増加傾向を示していた。
65歳以上の高齢者 (以下, 高齢者群) の口腔病変の特徴を明らかにする目的で16~64歳の労働者年齢層 (以下, 対照群) と比較検討を行った。疾患群別の変化では対照群が一定の傾向がみられなかったのに対し高齢者群では経年的に補綴疾患群の減少と保存疾患群の増加がみられた。口腔外科疾患群についてみると, 高齢者群ではすべての調査年で口腔粘膜疾患の頻度が高く, 粘膜疾患に関連した非歯原性良性腫瘍と口腔心身症の増加傾向が認められた。また, 対照群では歯冠補綴の頻度が減少していたのに対し, 高齢者群では有床義歯の減少と歯冠補綴のわずかな増加がみられた。
以上の観察結果より, 高齢患者の増加に伴い口腔病変の疾病構造も変化していることが示唆された。

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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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