HSR-902の骨盤神経終末と膀胱壁筋との間の神経伝達への作用をモルモット摘出膀胱壁筋の経壁刺激による収縮(TM収縮)を指標として検討し,その作用をatropine sulfate, butylscopolamine bromide, timepidium bromideおよびprifinium bromideのそれと比較した. 1) TM収縮 (50Hz, 1msec, 100V, 5秒間)はtetrodotoxin (3×10
-8g/ml) で完全に抑制されたが, hexamethonium chloride (1×10
-4g/ml) でまったく抑制されず,またatropins sulfate (1×10
-5g/ml) でわずかに抑制された.さらにTM収縮はneostigmine bromide (1×10
-7g/ml) で増強されたが,その作用はatropine sulfate (1×10
-5g/ml) で完全に抑制された. 2) 各被検薬は1×10
-7~1×10
-5g/mlにおいてTM収縮をほとんど抑制せず, HSR-902では1×10
-6~1×10
-5g/mlにおいてむしろ増強が認められ, 1×10
-5g/mlでは単独でtonusの上昇を示した. 3) phenoxybenzamine hydrochloride (1×10
-8g/ml) およびtolazoline hydrochloride (1×10
-5g/ml) はTM収縮を増強させ, tonusも上昇させた.また, HSR-902のTM収縮増強作用およびtonusの上昇作用はpropranolol hydrochloride (1×10
-5g/ml)存在下のnoradrenaline (1×10
-5g/ml) によって完全に抑制された.以上の結果より,各被検薬は経壁刺激によって生じた骨盤神経終末と膀胱壁筋との間の神経伝達をほとんど抑制せず, HSR-902においてはむしろ増強を示すことが示唆された.またこのHSR-902による増強作用の原因として,α-遮断作用に基づく下腹神経の骨盤神経終末部に対する抑制の解除が考えられた.
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