症例は41歳男性.主訴は顔面の浮腫性紅斑,嚥下困難,四肢近位筋力低下である.血液生化学検査にてCPK,GOT,LDH,aldo lase等の筋原性酵素の著明な上昇と,皮膚生検にて真皮に浮腫と小血管の拡張及びその周囲のリンパ球浸潤を認めた.以上より皮膚筋炎と診断された.なお,M蛋白,Bence-Tones蛋白は陰性で,骨髄穿刺や骨X線検査に異常無く,多発性骨髄腫の所見はみられなかった.上部消化管内視鏡検査を実施し,胃角部を中心に体中部から前庭部に及ぶ平皿潰瘍と,前庭部に数個のタコイボ糜爛様の病変を認め,胃悪性リンパ腫が疑われた.内視鏡検査実施3日後に,大量吐血したため緊急胃全摘出術が行われた.病理組織学的に体中部から前庭部まで浸潤する形質細胞腫と診断され,免疫学的検索の結果は,IgG,入型単クローン性免疫グロブリン産生性であった.術後,副腎皮質ホルモン,免疫抑制剤などにより皮膚筋炎は改善したが,呼吸器感染症を併発し,術後4カ月目に死亡した.なお,自験例は胃形質細胞腫に皮膚筋炎を合併した本邦第1例と思われる.
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