粘性株
Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus NCFB 2483により生産される多糖が発酵乳の粘性に与える影響を調べるため,粘性株と非粘性株(
L. delbrueckii subsp. bulgartcusNCFB 2074)の混合比を変えることにより多糖含量の異なる発酵乳を製造した.多糖含量と粘度の間には高い正の相関(r=0.967,P〈0.01)が,ホエ-分離量との間には高い負の相関(r=-0.907,P〈0.05)が認められた.10%乳固形分の脱脂乳に粘性株および非粘性株を用いて製造した発酵乳の流動曲線を調べたところ,いずれの場合もチキソトロピーを示したが,ヒステリシスループの面積および降伏値は,前者(12,3.69Pa)が後者(5,2.73Pa)より大きかった.発酵乳中の多糖含量は前者(72mg/l)が後者(31mg/l)よりも高く,多糖が発酵乳の流動特性に大きく寄与していることが示唆された.粘性株と非粘性株の混合スターター(1:1)により製造した8%乳固形分含量の発酵乳は,非粘性株のみで製造した0.3%ペクチン添加10%乳固形分含量の発酵乳より高い粘度を示し,ホエ-分離量が少ないことから,粘性株により生産される多糖が発酵乳の粘性(みかけの粘度)を増加させるとともに安定な発酵乳組織を形成し,ホエ-分離の抑制にも有効であることが考えられた.粘性株と非粘性株の適切な混合比を選ぶことにより,乳固形分の増加あるいは安定剤の添加なしに風味および組織の良好な発酵乳の製造が可能と考えられた.
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