ポリ(N-ビニルヵルバゾール)(PVK)は,多ハロゲン花物を加えて光化学処理すると,きわめて高い光電導を示すようになる。このとき生ずる増感物質について知見をうる目的で,分光学的に見いだされる3種の光化学生成物,すなわち分子状ハロゲン,紫外から可視部にかけて光を吸収する未知物質,および600~700nmを吸収する色素のうちとくに後二者の性質および関連を調べた。実験は主にCHI
3またはCBr
4を加えたPVK膜について行なった。まず,色素は可視光で破壊され,またアンモニァで可逆的に退色することが見いだされ,この結果から陽イオン性色素の生成を予想した。つぎに,PVKの粘度は光化学処理により大きくなり,おそらく橋かけ反応が起こっていることを示した。反応後のPVKの赤外吸収スペクトルから,カルバゾール環の3-位に置換塞導入を示す吸収帯を見いだした。また色素量と光電流の間に明らかな対応性が認められた。さらに,色素の生成と,近紫外部光を吸収する未知物質の生成の間に関連があることも明らかになった。これらの結果から,増感物質はカルバゾール環を発色団とする色素であり,同時にPVKを橋かけしていることが推定された。光化学処理したPVKが高い光電導性を示すのは,色素がPVKの鎖と直接結合していることに由来するものと考えられる。
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