将来の骨粗鬆症予防のためには若年期における食生活が重要であり, カルシウム動態も大きく変化する妊娠期は特に大切な時期であると考えられるが, 妊娠期においては自身の食管理が不十分になることが多い。そこで妊婦100人を対象に, 妊娠初期, 中期, 後期において食品摂取状況や食生活状況をアンケート調査し, カルシウムを中心とする栄養素等摂取の改善に向け分析を行った。
その結果, 妊娠以前に比べ, 食に対する意識は妊娠を契機に全般に高まるが, 初期においては妊娠以前より果物, 牛乳の摂取は増えるものの, 摂取量が減る食品が多く, 料理することが嫌になったり, 食に対して積極的ではない者が多かった。しかし, 中期になると摂取量が増える食品も多くなり, 食に対して最も前向きであった。
摂取栄養素量等はこれまでの調査と同様に, カルシウム, 鉄の充足率が低く, 初期の段階で病院の栄養指導を受ける者が7割以上にのぼった。中期になると, 栄養指導を受けた者のカルシウム摂取量の平均値は有意に増加し, 受けなかった群と同じレベルに改善し, 指導効果が見られた。
一方, 初期から後期までを通して栄養指導を受けた回数別に比較したところ, 指導回数を重ねた者ほど初期の段階で栄養摂取量が有意に低い値となった。従って, 初期の段階で低摂取量の人に対しては, 特に継続的な指導を行っていく必要があり, 食行動の変容を促す意識付けが重要であると考える。
抄録全体を表示