本文は堰上流の堆砂問題を解析的に扱わんと試みたものである。一定流量を流す矩形水路の場合, 堰上流の砂面形の変化を, 京大岩垣助教授提案の特性曲線法により解析的に求めた。なお上述の解析を確かめるべく, 実験水路を用いた若干の研究が行われた。
貯水池の埋没は近年にいたつて発電, 河川工学上の重要問題となつた。ことに河川からの流出土砂が多く, 地形的にも貯水効率のひくいわが国では, 貯水池の急速な埋没は経済効果を不利にするだけでなく, 有効貯水量の減少, 洪水位の上昇, 浸水区域の増大, 排水不良などの弊害を生ずる。近年流砂をともなう流れについての水理学的研究が盛んに行われるようになり, 未解決だつたこの方面の研究に新分野が拓かれつつあることは喜ぶべきことである。筆者はすでに bed load のみを対象として, ひくい堰のプールが砂で埋没される基礎実験を試み, 興味ぶかい二, 三の堆砂現象の特性を報告した。またダムの堆砂現象のような移動床の不定流に適すべき流砂量法則についてのべ, このような移動床の変化をしらべるには6個の方程式を解析的に解くことの必要を力説した。最近京大の岩垣助教授は, これらの方程式を変形して特性曲線法により解析する方法を提案せられ, この方面の研究に一歩を進める結果となつた。以下本文においては, 筆者が行つた移動床上での堰の堆砂実験の一例をあげ, これに前述の特性曲線法を適用せんとする場合, いかなる点が問題になり, またどのような結果が得られるか, などについて実験結果と計算結果の比較検討を試みたものである。
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