近年口腔がんの罹患率や死亡率は増加傾向にあり,歯科医療の現場では早期発見のための意識改革が求められている.他部位のがん検診に比べ,口腔がんのスクリーニング検査に対する関心は低く,一般に広く周知されているとは言い難い.われわれは関係機関と共通理解を図り,協働して口腔がんの早期発見のために実りある活動を展開していきたいと考えている. 1. 口腔がん検診 岩手県内の一部の地域では集団検診が行われてきた.大槌町では2011 年から口腔粘膜疾患のコホート研究として年に1 回の検診を継続している.また,花巻市においても2016 年から歯科保健大会に伴う口腔がん検診が行われている.より広域での実施が望まれる. 2.
岩手県歯科医師会
との連携
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会員が日常の臨床の中で個別検診を実施する際,チェックポイントを明示したマニュアルを作成し,協力を仰いだ.これにより,当院への円滑な紹介システムが構築されている. 3. 院内における診療体制 口腔がんの早期発見には,口腔内全体を診察することが有効だが,院内でアンケート調査を行ったところ,初診時に口腔がんスクリーニング検査を実施しているのは43.6%であった.これを受けて2018 年から臨床研修歯科医のオリエンテーションに「口腔がんスクリーニング検査の重要性」という講義を新設した.院内での検査の普及,歯科医師の意識,スキルの向上に繋がっていくものと考えている. 4. 一般社会への啓発 歯科を受診する患者のみならず,自治体や企業による保健事業等を通して口腔がんに対する関心を喚起し,機会をとらえて一般社会に広くセルフチェック方法を紹介したい.杉山芳樹名誉教授が考案された簡便な検査法「あーかんべー検査」は有効な方法の一例である. これらの中で,歯科医師による日常の臨床での個別検診は,口腔がん早期発見への最短コースに繋がると思われる.
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との連携を強化し,具体的手段として個別検診の受診率向上を図っていきたい.
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