数値実験に基づき,条件付不安定大気中で発現する積雲対流の卓越モードの力学的性質について得られた結果が示される。前論文(浅井•中筋,1977)で用いられた上昇域は常に水蒸気で飽和,下降域は未飽和という仮定がとり除かれ,水蒸気を陽に取り扱うモデルに修正された。前論文と同様,最初,温位にランダムな微小振幅の擾乱を与え,最終的に残る準定常的な対流セルを積雲対流卓越モードとした。このようにして得られた積雲対流の卓越モードは対流セルの水
平規
模(あるいはaspect ratio,即ち水
平規
模/鉛直規模)と上昇流域の全域に対して占める割合(あるいは雲量)によって表わされる。これら卓越モードが平均場の状態にいかに依存するかを調べ大略,前論文の結果を確認することができた。平均上昇流が増すにつれ,卓越モードの水
平規
模は小さくなり,雲量は大きくなる。一方平均下降流が強まると急速に水
平規
模は大きく,雲量は小さくなり,やがて消滅する。相対湿度に対する卓越モードの応答は平均上昇流域では鈍感,平均下降流域では敏感である。また,積雲対流の卓越モードは位置エネルギーを最低にするものとして実現していることも示される。
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