症例1:66歳,女性.主訴は労作時息切れ.心電図で四肢低電位差,心エコー図で軽度心肥大と拘束型僧帽弁流入が認められた.心筋生検像は心筋細胞の巣状脱落と強い線維化を呈していた.心房粗動および洞停止を合併したため,ペースメーカー植え込みがなされた.しかし,右房の刺激閾値が7.5Vと高くVVIモードが適応された.心肥大と心不全は次第に増悪し,洞不全発症から2カ月後に永眠された.心筋生検の再評価では,小血管壁に限局したアミロイドが検出され,心アミロイドーシスであったことが判明した.
症例2:60歳,男性.ふらつきの精査で洞停止を指摘された.心電図で四肢低電位差,心エコー図で求心性心肥大と拘束型僧帽弁流入が認められた.ペースメーカーが適応され,術前に刺激閾値測定と心筋生検,また,ポケット形成時に脂肪組織生検がなされた.右房の刺激閾値は5Vと高値であったのでVVIモードが選択された.心筋および皮下脂肪からはALタイプのアミロイドが検出された.MP療法が開始され洞不全発症から約13カ月後も生存中である.心アミロイドーシスの診断には,心電図の低電位差と心エコー図の心肥大との不釣合いに注目して,直接または間接的にアミロイドの検出を試みるべきである.洞不全症候群の合併には,心房刺激閾値の異常高値やペースメーカー植え込み後のペーシング不全に注意し, アミロイドーシスの治療も併用すべきである.
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