抄録
完全心房停止に対し,植え込み型ペースメーカーによる房室結節ペーシングを行い,重症心不全の改善が見られた症例を経験したので報告する.症例は70歳男性.1998年7月に心アミロイドーシスによる洞不全症候群に対しDDDペースメーカーが植え込まれた.1999年1月頃より心不全症状が出現し,利尿剤,ジギタリス等で治療したが,徐々に心房閾値の上昇を認め,1999年9月より心房ペーシング不能,心房停止の状態になり心不全増悪傾向を認めた.心室ペーシングによる心室内伝導異常が心不全の増悪因子と考え,心房ペーシングを試みたが,10V刺激でも捕捉する部位が検出されなかった.しかし,房室結節領域を右房側より電気刺激すると約90msecの間隙を伴うnarrow QRSの心室捕捉が可能であり,この領域にスクリューイン電極を固定し,永久ペーシング治療を行ったところ,心不全の改善が見られた.心不全に対するペーシング治療の新しい方法と考えられた.