近世を通じて刊行された噺本は、ほとんどその形態、内容を変化させる事が無かった点で、近世文学の中で異彩を放つ文学ジャンルである。とはいっても全く変化が無かった訳ではない。半紙本から小本へ小本から中本へ、中に描かれる人物達もその姿を変えてきた。本論考ではその変化の過程を巻頭話・巻末話の分析によって試みている。その際、明和九年刊行の『稿話 鹿の子餅』の巻末にある下司咄屎果以古語先此巻是切(ケスノハナシハクソテハツルノモツテコゴヲマツゴノマキハコレキリ)という一文にも注目し併せて考察している。
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