本稿では, 心理学と精神療法における 「共感」 を取り上げて, その内容を検討した.
心理学における 「共感」 には, 「共鳴反応」 (情動的共感) と, 「感情移入」 (認知的共感) の2つのプロセスがある. 共鳴反応は, 脳のミラーニューロン的な処理が関係しており, 感情移入は心の理論が関係している.
精神療法では, 患者を理解するために 「共感」 が不可欠である. 心理学的な共感は, 精神療法における共感の基礎である. 精神療法の 「共感」 は高度な認識であり, 患者の心が治療者に 「伝わってくる」 (共感) ためには, 「わからない」 という感覚をもったままもちこたえる (ネガティブ・ケイパビリティ) とともに, 患者の発するシグナルをキャッチする注意力が必要になる. 日頃から治療者が自らの経験を深め, 自らの心を深く見つめることが大切である. 患者を, 苦しんでいる一人の人間として尊敬し, 歓待し, 理解しようと努力することが, 共感に至る入口である.
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