本論文では,近年方法論の展開が大きく進んでいる異質性と摂動性という観点に特化して離散選択モデル研究の包括的なレビューを行い,今後の行動モデル研究についての展望を示すことを目的とする.まず,異質性に関しては,Mixed Multinomial Logit モデルを理論の下敷きとして,個人の選好の異質性を離散選択モデルの枠組で具体的に記述し,詳細な個人データに基づいて推計するための近年の方法論開発についてレビューを行う.次に,摂動性に関しては,摂動効用の概念を概説した上で様々な意思決定の場面への応用可能性を示すと共に,一般化エントロピー,凸共役性,需要関数の可逆性等の概念を鍵とした需要推計方法論の展開について包括的に整理する.最後に,レビューを総括した上で,今後の行動モデル研究の展望について論じる.
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