ボツリヌス食中毒の原因物質である神経毒素はシナプス前部に作用し,神経伝達物質の開口放出を阻害することにより弛緩性麻痺を引き起こす。本研究ではモノクローナル抗体を利用した抗原微細構造の解析から神経毒素は軽鎖,重鎖N末端領域およびC末端領域の異なる機能を持つ3つのドメインから構成され,重鎖C末端領域は受容体認識機能を担っていることを明らかにした。B型神経毒素に対する受容体蛋白はシナプス小胞に存在するシナプトタグミンであり,この分子のN末端領域とガングリオシドGT1bあるいはGD1aが複合体を構成することにより毒素結合活性を発現することを実証した。さらに抗ガングリオシドGT1bモノクローナル抗体はB型以外の神経毒素の作用も抑制することから,受容体を構成する蛋白は結合する毒素の型特異性を決定し,ガングリオシドは受容体構築における相補的な共通成分として機能していると考えられた。
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