Ⅰ.はじめに
中学校では、平成29(2017)年に、高等学校では、平成30(2018)年に学習指導要領が改訂され、高等学校に、必履修科目の「地理総合」と選択履修科目の「地理探究」が創設された。平成30年告示の高等学校学習指導要領(
文部科学省
、2018a)の「地理総合」の3 内容の取扱いには、中学校社会科との関連を図ると示され、「地理探究」にも中学校社会科を意識した説明が見られる。「地理探究」は「地理総合」を履修後、学習することになっているため、高等学校では、令和5(2023)年度に、はじめて実践されている。そこで、「中学校社会科」、「地理総合」、「地理探究」の実践を踏まえた、事例地域をヨーロッパとした地誌学習の課題について報告する。
Ⅱ.中学校社会科
平成29年告示の中学校学習指導要領(
文部科学省
、2017b)の中学校社会科地理的分野では、ヨーロッパは①から⑥の各州の1つとして示されている。そのため、中学校ではヨーロッパを州単位で学習されていると考えられる。また、ヨーロッパ州のヨーロッパ連合(以下、EU)という地域の結び付きに着目し、EU拡大に伴う、農業や工業などの産業の変化が扱われていると想定される。
Ⅲ.地理探究
平成30年告示の高等学校学習指導要領(
文部科学省
、2018a)の「地理探究」では、様々な規模の地域を世界全体から偏りなく取り上げるようになってはいるが、中学校社会科地理的分野の「世界の諸地域」の学習における主に州を単位とする取り上げ方とは異なることが明示されている。その中で、地域的特色や構造や変容などを地誌的に考察することが求められている。
Ⅳ.地理総合
平成30年告示の高等学校学習指導要領(
文部科学省
、2018a)の「地理総合」では、ヨーロッパを州単位で学習することもできず、地誌的な考察もできないことになっている。もとより、「地理総合」は、持続可能な社会づくりを目指し、環境条件と人間の営みとの関わりに着目して現代の地理的な諸課題を考察する科目と示されているため、各単元で地理的な諸課題を考察することが求められている。そこで、各中項目を内容のまとまりとした次の5つの単元構成の中で、ヨーロッパ地域を事例地域とした例を示したい。
1.地図や地理情報システムと現代世界
2.生活文化の多様性と国際理解
3.地球的課題と国際協力
4.自然環境と防災
5.生活圏の調査と地域の展望
文献
文部科学省
(2017a):『小学校学習指導要領(平成29年告示)』.
文部科学省
文部科学省
(2017b):『中学校学習指導要領(平成30年告示)』.
文部科学省
文部科学省
(2018a):『高等学校学習指導要領(平成30年告示)』.
文部科学省
文部科学省
(2018b):『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 地理歴史編』.東洋館出版社
Waugh, D. and Bushell, T. (2014):Key Geography New Interactions,OXFORD
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