「ネット中立性」は「インターネット中立性」と同一ではなく,「インターネット中立性」を実現することを念頭に置いた議論と検討が行われなければならない.「ネット中立性」と「自律性」を提供し,そのうえで,「インターネット中立性」で定義された消費者(=ユーザ)の権利を実現するための,ネットワークに課すべき要件が考察されなければならない.また,現在の海外線トラヒックに見られるトラヒックの不均衡は,インターネットのグローバル性と,各国ごとに制定される法制や規制の不統一性に起因しているとも考えられる.すなわち,我が国の法制や規制の考察においては,インターネットの持つグローバル性の影響を慎重かつ適切に考慮しなければならない.更に,ISPにとっての問題トラヒックが,P2P(Peer to Peer)トラヒックではなく,映像などのリッチコンテンツのストリーミングトラヒックに移行しており,この問題の解決可能な技術がP2P技術である可能性が大きい点は注目に値するであろう.このような,インターネットトラヒックの現状と最新技術の動向を考慮した「ネット中立性」の議論が行われなければならない.
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