新聞
の価値は内容を第一とするが、グラフィックスとしての外観も商品価値の一側面として向上が求められる。
新聞
の外観的品質向上を企図する前提として、
新聞
グラフィックスに関する知見の体系化を要する。筆者はこの認識の下、
新聞
グラフィックスの分析を行う。まず現在の
新聞
を成立させている印刷物としての基礎的要因を明らかにすることを研究課題とした。印刷媒体という社会的側面、機械生産物という物質的側面に着目し「印刷物としての
新聞
」の姿を明らかにすることを目的とし、以下の3つの観点から文献調査を行った。(1)印刷媒体としての
新聞
の現状評価 (2)印刷速度からの
新聞
の現状評価 (3)印刷精度からの
新聞
の現状評価 業界誌「
新聞
研究」や「日本
新聞
年鑑」、先行研究論文および各
新聞
社発行の社史や日本印刷学会刊行書籍などから客観性のある数値データや事例を得た。また、
新聞
輪転機メーカーの専門家、西日本
新聞
社の専門家から聞き取り調査を行った。これらの情報を経時的に再構成し、生産技術史の観点から包括的に検証し、今日の
新聞
の現状を明らかにした。結果は以下のようなものとなった。(1)
新聞
は接触頻度や信頼性に於いて他メディアより優れ、総発行部数が日産6千万部超の大量印刷物であるとの結果を得た。(2)輪転機は大量生産装置として進歩を遂げ、昭和初期には早くも毎時7万部を超える生産速度を獲得した。現在では毎時7.5万〜10万部という速度を持つ最高速印刷機であり、電子制御された高度なシステムに発展しているとの結果を得た。(3)印刷精度の尺度として、線数に着目して検証した。高速印刷という制約から、その線数は約80年にわたり一般商業印刷より低く抑えられてきた。現在はデジタル技術によりカラー200線という精細な表現が可能となり、線数に於いて商業印刷との差は縮まっているとの結果を得た。上記3点より、
新聞
は社会的に影響力が大きく、最高速の印刷機を用いて一般商業印刷と比肩する精度で印刷される大量印刷物であると結論づけられた。この結論から現在の
新聞
は、迅速かつ精緻な表現力を備え、多くの鑑賞者に接触するという、グラフィックス表現媒体としての優れた特徴を持つものと評価される。
抄録全体を表示