ハダニ類は様々な作物の重要害虫であるが,薬剤抵抗性の発達が著しく,近年は天敵を利用した生物的防除への関心が高まっている.カブリダニ類は有力な天敵候補の一つであるが,減農薬体系下では多様なカブリダニ類が出現するため,どの種が有望であるか特定する必要がある.しかし,体サイズが小さなカブリダニ類の捕食行動を野外で観察することは困難である.近年,PCRを利用した被食者検出技術が様々な捕食者─被食者系の研究で用いられるようになってきた.本研究では,カブリダニ類─ハダニ類の系においてこの方法を用いて,ハダニ卵を捕食させたカブリダニからハダニ由来DNAを検出できるか試みた.ハダニ特異的PCR産物は,通常のアガロースゲル電気泳動では検出できなかったが,蛍光プライマーによるPCR産物のジェネティックアナライザーによるフラグメント解析によって,効率的に検出可能であった.産下後3時間以内のハダニ卵を捕食した場合は全く検出できなかったが,24時間以上経過したハダニ卵の場合は100%検出可能であった.本方法は,カブリダニ類─ハダニ類の捕食─被食関係を明らかにするために利用可能と期待できた.
抄録全体を表示