租税手続法は,租税実体法を実現するに当たり,租税債務の存否ないしその内容に関する各主体の認識の差異に基づく紛争を処理するという,固有の規範的意義を有する。合法性原則は,課税要件が充足されている場合に,実体法の定めに基づいて成立している租税債権をその通り確定して行使することを課税庁に要請するものであるが,実際に課税要件が充足されているか否かが不明である場合に,課税庁が調査義務を尽くしたうえで,それ以上の調査検討を取りやめることまでを禁ずるものではない。課税庁が負うべき調査義務の範囲については,合法性原則が一定の規範的要請をもつ可能性もあるが,いずれにせよ,税務執行の効率性の観点から調査義務の限界が画される事態はあり得る。行政庁の調査義務の範囲の問題は,税務執行の正確性と効率性とを行政手続法の平面で調整する論点であると言え,納税義務に関する和解の許容性にも,同じ問題が含まれるものと考えられる。
抄録全体を表示