東日本大震災以後,企業は保有する資産を大きく占めるCREを,企業価値を向上させる経営資源として,そして自社の成長戦略の一環として最適かつ効率的に運用することが求められている。
こうしたCRE戦略を展開するに当たっては,阻害要因となる可能性の高い「土壌汚染リスク」を予め把握し,経営へのインパクトを最小化しながら,不動産資産を活用,流動化を図ることが重要となる。
そのためには,地歴調査,資料等調査などと呼ばれる土地利用履歴を確認する調査などのスクリーニングをかけた上で,ダメージが大きく,リスクが高い可能性があると評価された不動産を,次ステップとして現地調査を実施し,定量的に評価するといった段階的なアプローチが望ましい。
また,複数の事業所をある評価軸で並列に評価する場合の手法として,リスクレベルマトリクスの概念を紹介する。これは土壌汚染ダメージを構成する「汚染発生のおそれ」と「周辺環境への影響」の2つの評価軸をもとにマトリクス表示したものとなっている。
こうした概念を踏まえ,企業はまず所有不動産を土壌汚染リスクの観点からスクリーニングしておき,売却を検討する進捗に応じて,より精度の高い調査をしていくこと,そして土壌汚染が顕在化した不動産については,コストの低い土壌汚染対策手法を適用しながら,売却のみならず保有しながら有効活用を図っていくことも念頭に入れて,土地活用を検討することが望まれる。
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