2019年6月,ILOで「仕事の世界における暴力とハラスメントの撤廃に関する条約」が採択された。この条約では,ハラスメントを身体的,精神的,性的または経済的な害悪を与える行為として広くとらえ,雇用契約上の労働者のみならず,インターンや休職者,さらには「使用者の権限,義務,責任を行使している人」も広く保護対象としている。
一方,日本では,同年5月に,事業主にパワハラ防止措置を義務付ける法律が成立したが,保護対象となる労働者は限定され,ハラスメント禁止条項や刑事罰が規定されていないため,条約が求める水準には至っていない。また,パワハラ,セクハラ,マタハラが別個の法律や指針で規定されているため法構造がわかりづらく,ハラスメントが生じる背景や要因を捉えて解消するという視点も不足している。
日本でも,これらの課題を踏まえて独立のハラスメント防止法の制定を検討すべきである。
抄録全体を表示