本報告は、日本における性暴力・性被害に関するメディアを取り巻く現状について、被害当事者の立場、被害者を支援する立場、報道する立場、といった三つの立場から考察する。当事者性とは公権力が主である取材先から女性記者が性暴力、セクハラという性被害を受けてきた。女性記者が仕事を続ける上で、構造上存在する取材先との支配的関係性の中で、性被害が起きている。改善されなかった要因として、日本のメディアは、記者のうち女性は2割だけという圧倒的な男性中心主義的組織であることから、女性記者が直面する問題が可視化されてこなかった。また、編集の意思決定は男性が多く占め、ニュースも男性目線に偏り、このホモソーシャルな体制が、多様性の欠けるニュースの価値判断の基準となる要因である。メディアのホモソーシャルな体制は性暴力、性被害の報道の表現や扱いについても影響している。性暴力事案の表現について、強制性交罪、強姦罪を「暴行」「乱暴」などという置き換えをしているメディアがあり、被害を矮小化し、被害者の貶めにも繋がりかねない。被害者は黙り、被害を表には出してはいけない、といった強姦神話による偏見差別を助長するようなことがないよう、メディアは今後、ジェンダー研究とともに、研鑽を重ねていかねばならない。