【目的】現在, 脳卒中リハビリテーション患者において多施設で妥当性が確認された予後予測の方法は少なく、明らかにされていない. そこで, 多施設参加型データベースを用いて日常生活動作, 在院日数, 退院先など帰結に関連する要因を適切に解析するための基礎解析として, 今回は, 病型分類により影響する因子を比較, 検討したので報告する.
【方法】厚生労働科学研究費補助金(主任研究者 平成17年度~山口明,平成19年度~近藤克則)を受け, 多施設でデータを共有する「脳卒中リハビリテーション患者データバンク」が開発された. 2008年7月までに登録された2598名(24病院)を対象に病型分類で以下の因子について分析を行った. 患者情報(性別, 年齢, 在院日数, 入・退院時のBarthel Index;BI, Functional Independence Measure;FIM, 退院先)と病院情報(リハ医の関与, カンファレンス回数)について病型大分類(脳梗塞, 脳出血,くも膜下出血)と中分類(脳梗塞;ラクナ梗塞, アテローム血栓性脳梗塞, 心原性脳塞栓. 脳出血;高血圧性, その他・不明)各々により比較した. 統計解析はSPSS14.0Jを用い, χ2検定, 一元配置分散分析を行った. なお, 本研究において用いたデータは個人情報保護のため匿名化処理を行った.
【結果】欠損値や異常値を含むデータを除外した2450名(男性1395名, 女性1055名, 年齢71.6±12.1歳)を解析対象とした. 病型別内訳は, 大分類で脳梗塞 1670名(64%), 脳出血668名(26%), くも膜下出血 112名(4%)であった. 中分類では, ラクナ梗塞 369名(15.1%), アテローム血栓性脳梗塞 827名(33.8%), 心原性脳塞栓 365名(14.9%), 高血圧性脳出血 536名(21.9%), 脳出血(その他・不明)132名(5.4%)であった. 大分類では, カンファレンス回数, BI・ FIM改善率において有意差はなかったが, 脳梗塞で, 有意に高齢層が多く(脳梗塞, 脳出血, くも膜下出血:73.7±10.9, 67.2±13.0, 66.4±14.0歳), 入院BI・FIMが高く(BI; 38.5±32.5, 25.4±29.3, 27.9±31.3点), 在院日数が短く(53.5±45.3, 64.7±51.6, 74.7±50.5日), 改善度が低かった(23.2±22.9, 27.1±26.0, 33.5±32.1点).中分類において, 性別, リハ医の関与, BI・FIM改善度で有意差はなかったが, 例えば, 脳梗塞の中でラクナ梗塞では,入院・退院時BI・FIMとも有意に高く(BI;入院 52.3±30.9、退院 73.7±29.7点), 自宅退院が多かった(73.9%)(p<0.05).
【考察および結論】今回の結果から, 病型別で帰結に関与する因子の分布が異なることが明らかとなった. 精度の高い予後予測やクリニカルパスの作成などにおいて, 病型分類は考慮すべきであり, 特に基本・病院情報, BI・FIM改善度については大分類で, 在院日数, 入院・退院時BI・FIM, 退院先については中分類で解析を進めるべきであることが示唆された.
【謝辞】本研究は厚生労働科学研究費助成金(H19-長寿-一般-018)を受けて行った.
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