電気泳動手法により泌乳期間における馬初乳蛋白質の経時的動態を明らかにするため,高度の解析が可能な二次元電気泳動(2-D)法および二次元泳動後のElectroblotting法を用いて初乳から常乳への変化を調べた結果,以下の成績が得られた.1. 分娩後1時間内の初乳は,少なくとも95個のスポットに分離でき,このうち同定できた成分は,αLa, PA, α
s1CN, α
1AT, α
1X, Al, Gc, FII,CRP, ATIII, Ali-Es, α
2HS, Xk, βCN, α
1AG, Tf, Lf, C9, Cp, Hp, IgG (T), α
1Mi, Clq,Pmg, C7, C4, C3c, C3, IgG, IgA, SIgA, Fg, α
2M, FNおよびIgMの35種類であった.2.CBBで染色される成分は,分娩後1時間内の初乳では72個であったが,9時間以上14時間内では50個,24時間以上72時間内では31個および2週間では20個に減少した.これらの結果と免疫グロブリン量の変化から,分娩後約5時間までの乳が初乳の特徴を示し,その後約9時間までが移行乳で,分娩後約9時間以降の乳はすでに常乳のレベルになっていることが分かった.3. 初乳から常乳への移行動態が2-D法による泳動パターンから観察できることから,本方法は初乳および代用乳等の質的レベルを検査する簡便な手段として応用できるものと考える.4. 初乳中の蛋白質成分は,血漿中のものと極めて類似していたが,乳特有の成分として,今回はCN, La, Lf, SIgAおよびM. C.(未同定)の5種類が認められた.SIgAは,分娩後2週間の常乳でも明確に検出でき他の免疫グロブリンとは異なる動態を示した.5. 分娩後5時間内の初乳では,血清と同様にPi, EsおよびTf型の多型が検出できた.
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