目的:南総里見八犬伝、椿説弓張月等の作者として知られる戯作者・
曲亭馬琴
(1767-1848年)は、身辺の出来事について詳細な日記をつけていた。その『
曲亭馬琴
日記』の天保2および3年(1831~32年)の2年間を対象とし、当時の食の状況を知ることを目的にして、特に菓子類について、その種類と用途に注目して文献調査をおこなった。
資料:『
曲亭馬琴
日記』(中央公論社、2009)の天保2年と同3年の本文から菓子の記述を抜き出し、各種菓子の記録数および全体に対する記録数の割合を調べた。その際、種類別と用途別の2種類の方法で集計した。種類別の集計では1種類の菓子の記録1つにつき1回と数え、用途別の集計においては、1つの用途に必要とされる菓子の数を菓子の登場回数とした。また、砂糖については入手頻度と入手量からその使用状況を推測した。
結果:日記に登場する菓子類を種類別にみると菓子、餅菓子といった大まかな分類の他、落雁、団子など個々の名称もあわせて25種類の菓子類に関する事柄が記録されていた(天保2年に143回、天保3年に162回の記録)。両年とも最も記録回数が多かったものは餅菓子(38回、55回)であり、正月準備に多種多様な餅を注文したものが多く見られた。次いで多かった砂糖(29回、36回)の場合は、白砂糖、黒砂糖の分類、分量等詳細に記録された日もあったが、砂糖を入手したということのみ記録された日もあった。用途では贈答、供え物、注文品記録、購入品記録等全部で20種に分類できた(169回、193回)。その中では貰い物が最も多く(68回、61回)、その送り主は大家にあたる人物、身内、友人、板元からの物が多数記録されていた。
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