暑熱環境下の体調管理や独居老人の熱中症予防等の観点から発汗量を無拘束計測する需要が増加しており携帯型の発汗計も市販されている. しかし測定原理上エアポンプが必要で小型化に難があり, 発汗レベルに応じて流量調整が必要などの問題点がある. そこで本研究では小型・簡易構造化, さらにはウェアラブル化も期待できる発汗計測法として, 汗の蒸散に伴う皮膚温の低下に着目した新規手法を考案した. その測定原理は, 皮膚表面に汗の蒸散する部位と防水シートを貼ることで汗が蒸散しない部位を設け, 各部位の温度(To, Tc)を2個の赤外線温度センサによりそれぞれ非接触的に計測する. そしてその温度差(ΔT)と水の蒸発潜熱から発汗量を推定するもので, 可動部分がなく温度センサのみで発汗の連続計測ができるのが特徴である. まず, 吸水材を用いた原理検証実験により原理の妥当性を確認した後, この原理に基づいた発汗計測用プローブを3Dプリンタにより試作し, その性能評価を行った.具体的にはハンドグリップ負荷による手掌の発汗量を市販発汗計と同時計測したところ,試作プローブで計測した発汗量は市販発汗計に比べて低値を示した. そこで, 原理の見直しや理論式の改定等を行い, エルゴメータ負荷による温熱性発汗の同時計測を行った. その結果, 10%以下の誤差で市販発汗計とほぼ同様な発汗波形を得ることができ, 簡便な発汗計測法としての本法の有用性が確認できた.
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