【目的】
自動及び他動運動は訓練場面において筋力強化等で用いることが多く,フィードバックには聴覚や視覚刺激を利用することある.自動運動が脳の賦活に関与し,視覚的介入によりさらに脳が賦活するという報告がある.しかし,他動運動や聴覚・視覚に関連した報告は少ない.本研究では,光イメージング脳機能測定装置を用いて, 自動及び他動運動時と聴覚・視覚刺激を加えた時の違いを前頭葉の酸化ヘモグロビン濃度長(以下oxyHb)の変化でその傾向を検証した.
【方法】
対象は同意を得られた健常成人10名(年齢22.4±3.3歳).測定機器は,光イメージング脳機能測定装置(Spectratech社製OEG-16)を用いた.測定部位は,前頭葉で全16チャンネルとした.実験デザインは,安静臥床にて30秒,その後右下肢複合屈曲・伸展運動を条件にて30秒(以下m),その後,再び安静臥床で30秒のヘモグロビン値を測定した.条件設定は,自動運動群(以下A群)と他動運動群(以下P群)にて,下記3条件ずつ行った.詳細は,閉眼・声掛けなし群(以下c),閉眼・声掛けあり群(以下Vo),運動肢を注視・声掛けなし群(以下Vi)とし,一人に対し上記6つの条件を実施した.統計処理は,rとm時のoxyHbの平均値と標準偏差を算出し,平均値の差を対応のあるt検定を用いた(p<0.05).今回は,前頭葉上部に着目し報告する.尚,本研究は当院倫理委員会規定に基づき実施した.
【結果】
左前頭葉上部を中心にm時に有意な差が認められた.A・P群での比較は前頭前野等の運動関連領域で共にoxyHb増加の傾向がみられ,よりA群に大きな増加が認められた.また,聴覚・視覚での介入ではA・P群共にoxyHb増加がみられ,その中でもVi群により大きな傾向がみられた.
【考察】
本研究は,右下肢での運動のため左前頭葉上部に有意な差が多くみられたと考えられる. 前頭前野の主な機能は運動の意志や注意等である.本実験の自動運動は自らの意志による運動であるため前頭前野の活動により大きな増加の傾向が認められたと考えられる.また,聴覚や視覚的介入により運動に注意が向き集中できたことで,運動関連領域における前頭前野の活動が増加したのではないかと考えられる.視覚は人の感覚の中で80%を占めているが,聴覚の比率は少ない.そのため視覚的介入を加えたことでoxyHbが増加したと考えた.
【まとめ】
m時では右前頭葉上部を中心に有意な差がみられた。A・P群共にoxyHbの増加傾向が認められ,自動運動がより脳の賦活に関与する傾向がみられた.また,それらを行う際には視覚的介入がより効果的である可能性があると考えられる.
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