神仏習合の現象は、平安時代に至り説の成立を見るが、それが中世においてどのように変容していったかを跡づけようとするものである。中世における説の浸透によって、神観念はさまざまに変化したが、そのなかでも神が人間の心に内在すると考えられるようになったのが、最も大きい変化だった。即ち、とは、仏が内なる神=心として顕現することであり、しかも煩悩にまみれたわれわれの本源的姿たる蛇身としてあらわれると見なされたのだった。そこには、中世神道が罪業と救済の信仰を指向するものだったことを示す。ところが、中世後期以降、人間の内なる「悪」へのまなざしは薄れ、吉田神道にみられるように、楽天的・肯定的な観念へと変貌してしまう。そしてそれが、近世神道の基盤を形作ることになるのである。

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今日神仏習合研究が行き詰まっている一つの原因は、「神仏習合」という視座を規定している歴史的な被拘束性に対する無自覚であり、その方法そのものが孕む問題性にあると考えられる。神-仏という二分法を前提とし、両者の習合と離反の距離を測定しようとする従来の神仏習合研究は、日本列島の宗教世界の主人公として超歴史的な実体である「神」と「仏」を想定するが、それはまったくのフィクションであり、「神」「仏」それぞれの概念も両者の区分も時代によって大きな揺らぎがある。そうした問題点を自覚した上で、今後「神仏習合」という研究のあり方を抜本的に再検討していく必要がある。そのための具体的な道筋としては、狭義の「神」「仏」が各時代の宗教世界全体に占める客観的位置を確定することが不可欠であり、その前提として「神」「仏」に留まらない雑多なカミの混在する日本列島の宗教世界を、ありのままの姿においてトータルに把握するための新たな方法の追求がなされなければならない。

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　本稿では，法華験記において神祇の登場する説話に対して，どのような神仏習合理論の影響があるかを検証した．神仏習合理論は，護法善神説，神身離脱説，

説の三つに分けられる．まず，奈良時代に，護法善神説と神身離脱説が広まる．護法善神説では，神は仏法を保護する護法神とされる．一方，神身離脱説では，神は衆生と同様，迷える存在であり，受苦の身を脱するため仏法の力により救われるとされる．平安時代になり，本地である仏・菩薩が衆生を救済するために神として現れるとする，説が登場し，徐々に神仏習合理論の主役となる．

　検証の結果，社格の高い神には，護法善神説が適用されている一方，社格の低い神には，神身離脱説が適用されていることが確認された．

説については，その影響を受けた説話はなかった．しかし，同一の神祇に，護法善神説と神身離脱説の二つの理論が適用されていることもあり，神の分類は，単純ではなく，多層的である．

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明惠は鎌倉仏教の著名な仏教者であるが、同時に日本古来の神々に対する篤い神祇信仰を有していた。本稿は、このような明惠の神祇信仰が彼の思想の中でどのような位置を占めているのか、明惠において神と仏の関係はどのようなものであったかという問題を検討しようとするものである。中世日本においてはすでに説が広まり、日本古来の神々にその本地として様々な仏たちが配当されていた。明惠が後半生に住した高山寺には住吉明神、春日明神などが勧請されていたが、後者は明惠に数度託宣を下していて重要な位置を占めている。この春日明神に対する熱烈な信仰は、説における本地仏たる釈迦に対する信仰に由来するのではなく、仏教以前の信仰と考えざるを得ない。ただしその信仰内容は仏教が浸透してこれを規定している。このような信仰は彼が交わりのあった笠置の貞慶より受け継いだのではないかと考えられる。明惠の神祇信仰は時代の下る日蓮などと比較してみると、その崇敬の念の自然さや素直さにおいて、個人の中に神と仏とが何の矛盾なく調和しているのを見ることができる。

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The Shinran Shōnin Goinnen 親鸞聖人御因縁 is a document created in the early religious community of Jōdo-shin Buddhism. The “Shinbutsu-Innen 真仏因縁, ” which it includes, is a document considered to be the source of the “Kumano-Reikoku 熊野霊告” in Kakunyo’s Shinran Denne 親鸞伝絵. The aim of this paper is to examine the “Shinbutsu-Innen” and “Kumano-Reikoku” from the perspective of the history of theology, and to clarify the passing on and development from Shinran’s views of deities. First, Shinran’s views of deities were confirmed, and the “Shinbutsu-Innen” and “Kumano-Reikoku” were examined from the following three perspectives: judgment of the true, provisional, and false, especially with regard to teachings; acceptance of the local manifestation theory; and views of the pure and the defiled. The “Shinbutsu-Innen” and “Kumano-Reikoku” differ from Shinran’s views with respect to the aspect of acknowledging the local manifestation relationship between Amitābha Buddha and Kumano Gongen 熊野権現. Regarding the perspectives of judgment of the true, provisional, and false and views of the pure and defiled, the succession from Shinran can be seen in the “Shinbutsu-Innen,” but is inconclusive in the “Kumano-Reikoku.”

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Zonkaku discusses the relationship between deities of the native Shinto religion and Buddhist bodhisattvas with the theory of honji suijaku. Distinguishing the gonsha and the jissha, he recommends respecting the gonsha and forbids worshiping the jissha. Kenmitsu Bukkyo adopted the theory to criticize non-entrusting to the deities claimed by Honen and Shinran. Zonkaku tried to rebut such criticism by standing on the same theory. This enabled him to avoid empty disputes which would occur by simply denying the deities; he intended to lead them to Amida Buddha by admitting the deities.
Shinran's thought on the deities has three aspects: non-entrusting, being protected, and non-disdaining. Zonkaku might summarize Shinran's thought in the frame of the theory of honji suijaku. By adopting this theory, the theoretical consistency with being protected and non-disdaining can be retained. Concerning non-entrusting, however, the consistency cannot be proved well. Therefore although Zonkaku adopted the theory, he emphasized the distinction between gonsha and jissha to emphasize to Shinran's policy of non-entrusting. This is a characteristic of Zonkaku's thought on the deities seen in the Shojinhongaishu and other works.

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神祇歌の月が詠まれていく諸相を検討する。院政期以降の急速な説を基盤にした神と仏による中世の世界観の確立という社会及び宗教情勢の中で、和歌は、神性をいかに詠みあらわしていったのか。神鏡・鏡像のイメージを背負い、神の顕現を告げ、仏の世界にも繋がっていた神域の月は、神秘的な時代独特の社の風景を捉えつつ、宮曼陀羅などの他の信仰媒体とも交渉しながら、神祇歌創作の中心的歌材として詠作されていく。

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