測量に基づく正しい地図から、それに建物などを立体的に表現して制作された正確な絵地図がある。また絵画に描かれた都市の図は、西欧でも日本でも俯瞰した構図が多く、絵地図を想わせる。それは山頂や塔から見下ろした視角と、実際の知識を合わせもったような表現である。ここでは建物の外観を描写した西欧と日本の都市が描かれた絵画を取り上げ、建物が集合してつくる都市の形が、それぞれの都市の特徴をどのように表現しているのかを考察する。これらは図法的には、透視図で描かれた街景の図ではなく、軸測投象や斜投象的に描写されていることが多い。プリミティブな絵画表現は、視覚体験を基に描くよりも、認識した情報を読めるように描いた。それは見えるがままではなく、在るがままに描いたのである。透視投象が、観者の一定の位置としての視点から、見えるがままに描こうとするものであるのに対して、これらの図に見るように軸測投象や斜投象は、視点を中心に「見える」ように描くのではなく、対象を中心にしてものが「在る」ことを、言い換えれば、対象の存在そのものを見せる図法であると言える。ここで取り上げた都市図は斜投象的に描くことによって、各々の都市の特徴を捉えて見せている。
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