本研究では大腸菌をバイオアッセイとして用いることにより,紫外線の殺菌作用を可視化できる教材開発を検討した.本研究の独自性は,非病原性大腸菌株(Escherichia coli DH5α株)の希釈液を噴霧ボトルから寒天培地に噴霧後,半分をアルミ箔で覆い,紫外線や太陽光を照射し,24時間37°Cで培養後の生育をパラメータとして殺菌作用を可視化した点である.培地への大腸菌の植菌法で,噴霧ボトルからの噴霧法は先行研究では行われていなかった.この噴霧法によりコロニーの均等な拡散を実現できた.またアルミ箔や紫外線カットフィルムで覆った領域をコントロールとすることで太陽光と太陽紫外線の照射の有無によるコロニー数の比較が明確になり,太陽光に含まれる紫外線の殺菌作用の可視化と定量化が実現した.また,晴天時と曇天時の紫外線量の違いも明確に可視化ができた.
本研究で開発した教材を高校生対象の講習会で実践した結果,生徒の紫外線の殺菌作用に対する理解の向上が確認できた.さらに,講習会に参加した教員に対する調査結果から,この教材を活用することで生徒が主体的に研究テーマを設定する探究活動において有用であることが示唆された.
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