【目的】
身体活動を光等で提示するバイオフィードバック(BF)は、片麻痺の理学療法において有効である。視覚BF のみと比較し、これに聴覚BF を追加することはその有効性を更に高めるであろうが、片麻痺患者に最適な聴覚BF はわかっていない。本研究の目的は、聴覚BF の種類が運動学習に及ぼす影響を明らかにすることである。
【方法】
組込基準を、慢性期、視覚・聴覚・意思疎通に障害なし、麻痺側足関節を随意的に背屈可能とし、4名の右片麻痺被験者(男
3名、平均62.5 歳)が参加した。被験者は、麻痺側に電子角度計付きの短下肢装具を装着した坐位となり、足関節底背屈で目標を追随する課題をトレーニングとして行い、またその前後で追随課題を行い、その課題の正確さを-100 から+100 の指標で数値化した。被験者は、視覚BF +フル聴覚BF(フルBF 群)と視覚BF +エラー聴覚BF(エラーBF 群)の2群に分かれた。
フルBF は目標と角度計からの角度を音の周波数に割り当て、常に2つの音が聞こえるように、またエラーBF は目標と角度計のデータが異なる時のみ、音を鳴らした。視覚BF はモニタ上に目標と角度計からのデータを表示し、群間で同一とした。なお、本研究は倫理委員会の承認を得た上で、被験者に同意署名を得た。
【結果】
トレーニング前の指標は、フルBF 群、エラーBF 群でそれぞれ(平均(個々の値))、44(33, 55) と24(19, 29) であった。トレーニング効果(トレーニング後指標/ トレーニング前指標× 100)はそれぞれ、121‰(122‰, 119‰) と162‰ (163‰,
162‰) であった。分かりやすさや楽しさ等を主観的指標として課題終了後に訪ねたが、群間で違いは認められなかった。
【結論】
視覚BF のみより、聴覚BF を追加した方が良いと報告されているが、情報が重複するとむしろ混乱を招くと報告されている。
本研究の結果は、聴覚BF の音を適切にデザインすることで、片麻痺患者の運動学習をより効果的に出来ることを示唆している。
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