難治性膀胱炎の診療では、薬剤性膀胱炎の可能性を念頭に置く必要がある。防風通聖散の8 年間の処方で薬剤性膀胱炎を起こし診断が遅れた症例を経験したことから、漢方薬による薬剤性膀胱炎の文献学的検討を行った。
PubMed、医学中央雑誌で検索した文献とその引用文献から、症例報告37 例(すべて本邦)を分析した。年齢は2 ~72 歳(中央値11 歳)と幅広く、小児期と老年期の二峰性を示した。男性14 例、女性23 例で年代別でも女性が多かった。無菌性膿尿が持続し、膀胱鏡で重度の炎症所見のほか一部で隆起所見を認めた。膀胱生検の行われた17 例中14 例(82.4%)で好酸球浸潤を認めた。被疑薬は柴苓湯、柴朴湯、小柴胡湯などで、94.6% がオウゴン含有方剤であった。被疑薬内服開始から発症までの期間は3 週間から10 年(中央値2 年)と長く、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、ネフローゼ症候群、慢性肝炎などに長期処方されていた。被疑薬中止から症状消失までの期間は3 ~42 日(中央値10 日)と短く、薬剤性膀胱炎の可能性に思い至れば治療は容易であった。チャレンジテスト(再処方による症状発現)は、行われた12 例全例で陽性だった。
薬剤性膀胱炎では、その可能性に気づき服薬中止で症状消失を確認することが肝要である。漢方薬はOTC 医薬品としても普及しており、副作用の薬剤性膀胱炎に肝障害や肺障害と同様の注意喚起が必要である。
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