木材から紙の原料となるパルプを生産する際に得られる,リグニンや樹脂酸といった天然樹脂は,枯渇するおそれがある石油や石炭のような化石資源とは異なり,植林により数十年のサイクルで再生可能(リニューアブル)な資源である。欧州や北米では,松を植林し,松材由来のパルプを生産すると共に,天然樹脂として脂肪酸やロジンを工業的に生産するプロセスが完成しており,自然とテクノロジーの調和を大切にしながら,「松(パイン)」から得られる化学物質を最大限に活用している。
ハリマ化成グループは,松材からパルプを製造するときに副生する粗トール油を原料として活用し,トールロジンやトール油脂肪酸等を生産,製紙用薬品等の製品を製造している。本稿では,私たちが取り組む「パインケミカル」と共に,松から得られる化学製品として,紙素材の活用に有用な水系樹脂“製紙用サイズ剤”と“紙素材用バリアコート剤”を紹介する。
製紙用サイズ剤は,ロジン系樹脂をアルカリでケン化して水溶化させた液体サイズ剤「ハーサイズL-50」,ロジン系樹脂を乳化分散させたエマルションサイズ剤の「ハーサイズNES」シリーズと「NeuRoz」シリーズがある。「ハーサイズL-50」および「NeuRoz」シリーズは,「間接食品添加物」として,米国・FDA,ドイツ・BfR,中国・GB9685等の海外食品包装材料規制に対応できる製品である。また,紙素材用バリアコート剤は,ハリマ化成グループのLawter社がバイオマス率80%以上のロジン系水性コーティング剤「XW」シリーズを開発している。この「XW」シリーズは,溶液型とエマルション型の製品があり,紙素材に対して,耐水性,耐油性,水蒸気バリア性等の機能を付与すると共に,紙製食品包装材料のバイオマス率上昇が可能である。もちろん,欧州や米国の海外食品包装材料規制にも対応している。
ハリマ化成グループは,中国や北南米,欧州といった海外拠点と技術協力して,安心して使用できる紙・セルロース素材の更なる活用を目指し,環境負荷の低減に寄与できる安全な製品の開発に取り組んでいる。
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