老人医療は老人を対象とした総合診療であるともいえる. その視点から「総合診療部 (科) の立場からの老年医学 (教育) への取り組みについて」と題するアンケート調査を大学病院勤務の総合診療研究会会員に対して行った. 医師の経歴, 所属科の老年医学に関する研究テーマ, 老年医学 (教育) に対する興味や老年医学についてのイメージ, 卒前・卒後の老年医学 (教育) のあり方, また総合診療の立場からする老年医学 (教育) についての考えなど6項目について回答を求めた. アンケートを郵送し, 181名中96名 (53.0%) から回答を得た. 回答者の現在の担当科は総合診療部門が51名 (53.1%), 教育上の立場は指導者が57名 (60.0%) を占めた. 往診を含む老人在宅医療に携わった者は46名 (48.4%), 日本老年医学会には17名 (18.1%) が所属していた. 老年医学 (教育) に対し興味があると答えた者は76名 (85.4%) であった.
老年医学のイメージとしては“老人を対象とした総合診療そのものである”とする者や老年医学 (教育) の重要性・必要性・特殊性を強調する意見のほか,“老年医学で得られた知識や成果が診療や教育に反映されていない”, また“老年医学 (教育) はなされていない”とする意見がみられた. 96.8%の回答者が老年医学に関する卒前・卒後教育の必要性を認めた. 卒前教育については, 老年医学教育を基礎, 臨床, 社会, その他の4つの部門に分け, 担当すべき科を質問した. 基礎, 社会部門はほとんどが空欄で回答しがたい状況が推測され, このことが現在の老年医学教育の困難さを示していると思われた. また, 講義と実習の重要性に関する質問では実習, とりわけ病院・施設の見学を必要とする意見が多かった. 卒後教育については, 臨床・社会医学に関する9項目および実際の研修上必要とされる6項目をとり上げ, 重要と思われる項目を選択するよう依頼したが, 前者では「医療と福祉, 介護」,「生活機能障害の総合評価」,「薬物療法」, 後者では「一般的ケア」,「リハビリテーション的指導」,「心理的サポート」がそれぞれ上位3位を占めた. 一方, 研究面に関するアンケートでは老年医学に関係した研究をしていると回答した者は20名 (22.5%) であった. その内容は日常生活動作や Living will をテーマとしたものなどで老人の健康や生活に密着した研究が行われていた.
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