著者らはすでに多くのテルペノイドを母格とした生物活性物質を合成し,その生物活性の発現に関与していると思われるP-メンテン骨格に注目している.そこで,本研究では(S)-d-ペリラアルデヒド(S)-1を出発物質として用い,チオール類との縮合反応を行いチオエステル類の合成を行った.これらd-体(S)と,先に合成し報告したl-体(R)からの縮合生成物にっいて,2種類のダニに対する殺ダニ活性試験と5種類の糸状菌に対する菌糸生育阻害試験にっいて検討し,以下の結果を得ることができた.
(1) d-体(S)およびl-体(R)から誘導した化合物は,いずれもコナヒョウヒダニに対してのみ活性が発現し,しかも,チオエスチル基の種類によっては,l-体(R)の誘導体よりも今回新たにd-体(S)から誘導した化合物(S)-3gおよび(S)-3iに著しい殺ダニ活性が発現することを見いだすことができた.
(2) イネいもち病菌,トマト疫病菌,イネ紋枯病菌,シバ苗立枯病菌,およびキュウリ灰色かび病菌に対する菌糸生育阻害試験では,特にイネいもち病菌およびトマト疫病菌に対して,いずれもd-体(S)およびl-体(R)から誘導した化合物(S)-3a,(R)-3a,(S)-3g,(R)-3g,(S)-3h,および(R)-3hに良好な阻害効果があることを明らかにすることができた.
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