草地土壌の粗孔隙の実態を明らかにするため,中国内蒙古ステップ草原の半乾燥地帯における
栗色土
を造影剤とX線を用いて三次元的に検討した。供試土壌はイネ科とキク科主体の草原土における深さ60cmまでの4層を対象とした。土壌の物理性は各層がち密度の高い砂質土であり,間隙分布は表層部分より下層部分で粗大間隙が多く,各々の層で有効間隙を含んでいた。X線で求めた孔隙形態を深さ別に区分すると,1層目(0-10cm)は牧草根による根成孔隙,地中動物による昆虫孔隙,亀裂に基づく波状形態,土粒子や団粒間間隙による粒団孔隙で構成されていた。II層目(10-15cm)からIV層目(55-60cm)における形態は根成孔隙と粒団孔隙が主体であった。排水領域(pF≦1.5)の粗孔隙は根成孔隙,昆虫孔隙,亀裂に由来し,保水領域(pF1.8,pF2.0)の微細孔隙は根成孔隙と粒団孔隙に基づいていた。以上の結果,
栗色土
の根群域における通気・通水作用を掌る粗孔隙は,黒ボク土と同じく牧草根に基づく根成孔隙が主体であった。この根成孔隙はち密な
栗色土
でも孔隙性に富む構造を造り,土壌の物理性に大きな役割を果たしていた。
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