昨今の原子力平和利用と核不拡散の国際情勢には2つの大きな潮流がある。1つは「原子力ルネサンス」と呼ばれる状況, すなわち米国での原子力回帰, 欧州での脱原子力政策の見直しやアジアの原子力利用拡大等であり, もう1つは北朝鮮の核実験実施, イランの核開発問題, カーン博士の「核の闇市場」, そして核テロの現実化等の核拡散の懸念が一層深刻化していることである。
原子力平和利用と核不拡散という視点で過去を振り返ってみると, 約50年前の“Atoms for Peace”に始まる原子力平和利用の国際的なスタート, 約30年前のインドの核実験, カーター大統領の核不拡散政策の強化と国際核燃料サイクル評価 (INFCE) 等国際的な秩序形成の動きがあった。そして現在は,
核兵器
不拡散条約 (NPT, 米, 露, 英, 仏, 中の5ヶ国を「
核兵器
国」と定め, 「
核兵器
国」以外への
核兵器
の拡散を防止することを目的とする条約) の「抜け穴」を繕うために, 再び核燃料供給保証等の「新たな秩序への模索」が始まっている。このように, 「新たな秩序への模索」は, 現在とは時代背景も環境も異なるが, 実は30年前にも類似の検討が行われていた。本稿では, これらの動向を概括した上で, 過去の結果と現在の状況を比較検討しつつ, 現在の「新たな秩序への模索」について解説してみたい。
なお, 本稿は, 日本原子力学会「2006年秋の大会」の講演内容をもとに筆者を加え, 加筆したものである。
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