日本の製造業において,品質への取り組みが,企業の財務業績に対しどの様な影響を与えるかを調査したものは非常に少ない。本論文では,企業における品質に対する取り組みの指標として,品質マネジメントシステムの国際規格であるISO9000認証取得を用いた。他社に先駆け,積極的にISO9000認証取得に向けて取り組むことが,企業の財務業績に対しどの様な影響をおよぼすかをイベントスタディ手法を用いて調査した。その結果,ISO9000の認証取得の2年度前から1年度前では,企業のROAおよび売上原価率ともに負の影響がある反面,認証取得年度から次年度にかけて,ROAおよび売上高原価率に好影響を与え,その後,年を経るにつれ影響度が薄れていることが明らかとなった。また,売上高成長率に対しては,はっきりとした影響は見られなかった。
抄録全体を表示