学校教育では,どのような実践が学習者の資質・能力を育成しうるのかに大きな関心が寄せられ,研究が行われている。これらの実践研究で得られた知見について,メタ分析を行うことで異なる条件で測定されたデータでも同一の尺度で比較し,検討することが可能となる。しかし,理科教育でメタ分析を行った研究例は少なく,地域に着目してメタ分析を行った例はない。さらに,教育活動の内容は学習指導要領で定められた内容を基礎とするが,各自治体は教育活動を充実すべくさまざまな独自の教育政策を実施している(田中,2020)。そこで,本研究では,茨城県内の理科教育実践についての研究論文を対象に効果量のメタ分析を行った。その結果,平均効果量は全体でg=0.640,二値データでg=0.780,多値データでg=0.617と推定された。これは,全国を対象とした中村ら(2020)の同様の分析と比較して,同程度からやや大きな効果であった。資質・能力を測定する際の調査方法の違いで効果量の大きさが有意に異なり,特に記述分析で思考力を測定するとg=1.272と推定され,相対的に大きな値を示した。本研究は,教育実践の平均効果量についてメタ分析を通して推定し,地域においてどのような教育実践が資質・能力の育成に有効であり,授業改善につながるか重要な知見を提供する。
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